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重なる道

……これまでの30年にわたる中国の「改革開放」政策は、まさに創造的破壊であった。だが、それは国民生活を豊かにする半面、街の伝統的な文化財などを破壊する「第二の文化大革命」と化している。
(略)
 現在、進行中の「改革開放」政策は、訒小平が号令した「経済発展こそ、この上なき道理だ」という大義名分の下で、数百年から千年以上も前の建築文化と文化財を毎日のように取り壊している。あと10年もすれば、中国の主要都市は、まったく表情も文化の匂いもない高層ビルが林立する無味乾燥な街並みに変わってしまうだろう。
(略)
 中国人は、自分の国のことを「悠久の歴史と、古くから栄えた文明が残る国」といつも誇りに思っている。だが、10年後にその文明は、歴史博物館以外のどこにも見つからなくなる可能性が高い。

 一見したところ方向性はまるで異なっているように見えますが、社会主義共産主義の革命観がもともと近代西欧の未来志向を先鋭化させたものであることを考えれば、似たような傾向が生まれることは別に不思議ではないように思います。歴史の重荷を振り捨て高度成長に邁進してきた日本もかつて通ってきた道です(恐らくは今も進行中)。


 ……直接の関係はありませんが何となく連想したこと。
 先日買ったディケイド本に、アクション俳優の“ミスター仮面ライダー高岩成二氏へのインタビュー記事が掲載されており、その中で『仮面ライダー555』の主役ライダー・ファイズを演じていた時の話題が出ていました。『555』では変身ベルトの使用者が一人とは限らず、同じベルトを何人もの人間が使い回していたのですが、異なる人物がファイズに変身した時のアクションの演じ分けについて、高岩氏は主人公の乾巧(ファイズのメイン変身者)とそのライバルキャラクターである木場勇治の演じ分けがもっとも難しかったと語っています。

……当時、演じ分けで一番ダメ出しを食らったのは木場のファイズで、どうやっても巧にしか見えなかったんです。自分なりの引き出しでやってみたんですけど「それは巧だよ」って指摘されて、初めて壁にぶつかってしまった。だけど、よくよく考えてみたら、巧と木場は変身前こそキャラは違いますけど、変身後の芝居は似ているというか同じなんですよね。違う道を進んでるけど行き着くところは同じで、あの二人は見えないところで並んでいたキャラだったんですよね。


(「仮面ライダーディケイド&平成仮面ライダーシリーズ10周年記念公式読本」p.174)

「変身して戦う」というアクションの側面でキャラを掘り下げて役作りをしていったら、異なる道を進む二人が実は同じような方向性を持っていることが見えてきたという、なかなか興味深い話だと思います。