とあるブログ記事を読んで思い出したこと

　以前、変なことを想像したことがある。

　いつも毎朝9時に始業する会社で、ある朝突然、事前に示し合わせてもいないのに社長からアルバイトまで全従業員の認識ががらっと変わっていて、
「私の勤め先は朝10時に始業する」
という認識が頭に定着していたとする。
　その朝、起きた従業員は一人残らず「10時までに出社しよう」と思い、全員が10時に出社した。
　さて、その会社の取引先の何社かが、9時を回ってからその会社に電話をかけていたが、もちろん10時になるまで誰も出ない。空しく電話が鳴り響くだけ。
　10時になってようやく社員が電話に出たので、取引先の人はちょっと不機嫌な声で文句をつけた。
「ちょっと、9時を過ぎても誰も電話に出ないってどういうことですか」
「弊社の営業時間は10時からとなっておりまして」
「いやいつも9時にいるし」
「いえそんなことありませんよ」
「そんなバカな」
　何しろ、この会社の社員は今朝から全員が完全に「10時始業」という認識で統一されているので、電話を切った後社員は回りの人と、
「うちが9時開始だと思い込んでたみたい」
「へー、いつも付き合いがあるのに知らないなんて、変なの」
みたいな会話をする。
　一方の取引先でも、電話を切った後、
「なんだありゃ、営業時間変更の話なんて誰か聞いてたか？」
「いえ聞いてませんが」
「変ですねえ。まさか全員飲み過ぎで一斉に遅刻したんじゃ」
「んなアホな」
みたいな会話をしている。

　さて、この会社の“本当の”営業開始時刻は、9時なのだろうか、それとも10時なのだろうか？