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“見え方”こそが大事

 昔買った文林堂「世界の傑作機」シリーズのF-117特集号を久しぶりにぱらぱらと読んでいました。

 既に2008年に全機退役していますが、未だに「ステルス」というと真っ先にF-117を連想します。

存在が発表される以前はステルス機はレーダーに映らないと言われていて、電波を特定の方向に反射するのではなくさまざまな方向に乱反射させて、レーダーに映らない程度に弱めるものと想像されていた。
しかし、実際は電波を特定方向にのみ反射する事により探知方向を制限させるという、予想とは全く逆の方式を用いていた。つまりレーダーに全く映らないのではなく、偶然にも特定方向に反射したレーダー波がキャッチされてしまう事もありえる。しかしそれはごく短時間で終わってしまい、レーダー上に反映される機影は飛行機と判別されないほど全く異なったものとなってしまう。この関係からレーダー上での機影は数あるアメリカ空軍の機密の中でも最重要軍事機密となっている。これはF-117に限った事ではなく、B-2やF-22などの他のステルス機についても同様である。


Wikipedia「F-117」の項

 機体そのものの形状よりも、それがレーダーの上でどう見えるかの方がより高い機密事項となるというのが面白いところです。敵のレーダーに映らない(映り難い)ことこそがF-117の最大の存在意義であり、本機の高い攻撃力や生残力は全てその一点のアドバンテージに賭けられているので(なにしろF-117の最大の防御手段は「見つからないから攻撃を受けない」ことなのです)、“実体”よりも敵に対する見え方=“表象”こそが肝要になるということでしょう。ヴィリリオあたりが好きそうな話ですが(もう何か書いていたりするのかな)。


 おまけ。
 Do As Infinity「夜鷹の夢」にF-117などの映像を組み合わせた動画。もともとコソボ紛争でのNATO空爆*1をモチーフにして書かれた歌詞なのだそうです(夜鷹=Night Hawk)。

*1:この時にF-117一機がユーゴ軍に撃墜されており、F-117が実戦で失われた唯一の例となっています