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BOARDジャケット

 ついでに『仮面ライダー剣』の話も書いてみます(またか)。
 作中で剣崎と橘はBOARDのマークが入ったジャケットをよく着用しており、最終回で相川始の前から消え去っていく時の剣崎も、そしてラストシーンで始が見た幻影の中でも、剣崎はBOARDジャケットを着ています。
 単純に考えればアパレル展開のプロモーションか何かを兼ねていたのか、あるいは単に撮影用衣装を手軽に使い回していただけとも考えられますが、作中の小道具としてこのジャケットにはもうちょっと深い“意味”が持たされていたんじゃないだろうか、という気がしています。


 作中で仮面ライダーの母体組織たる人類基盤史研究所=BOARDは最初からほとんど壊滅状態に陥っており、終盤で天王路理事長が人造アンデッドとして倒されることによって、組織としては完全に消滅したも同然となってしまいました。その点で言えば、剣崎たちのBOARDジャケットは単にむかし支給されたものを着続けているだけと言えなくもないわけです。
 でもその一方で、剣崎と橘にとってBOARDでの仕事(=仮面ライダー)は、単に与えられた仕事を淡々とこなすだけではない、一種の使命感*1を伴ったものでもありました。BOARDで開発された超バイク「ブラックファング」を巡るエピソードや、睦月が登場したばかりの頃の流れなどにおいて、仮面ライダーという仕事に対する二人の愛着は作中でもしばしば描写されており、BOARDは組織としては失われたとはいえ、剣崎たちにとっては変わらず“自分の生きる道”の象徴という意味をも持っていたのではないかと考えられます。
 だからこそ、BOARDの仕事の中で“封印すべき敵”という以上の意味を持たなかった怪物=アンデッド(ジョーカー)に自らの身を変えてしまった剣崎が、それでもなお最後までBOARDのマークが入ったジャケットを身に付けていたことは、BOARDという組織に剣崎が託していた“想い”が、組織としてのBOARDの消滅後もなお剣崎の胸に生き続けていることのシンボリックな表現として解釈できるのではないかと思うのです。しかもそれは、始が見た幻影においてもなお存続し続けています。
 全ての人を救うことに自らの存在意義を賭けた剣崎は、かつてBOARDに託していた信念を今なお変わらず抱きながら、どこかでひとり運命と戦い続けている……そんなビジョンが、最終回の剣崎のBOARDジャケットに象徴されていたのではないかと私には思えるのです。

*1:こう表現すると嶋さんに「くだらないな」と一蹴されてしまいそうですが、ここではとりあえずこう書いておきます